「税理士って信頼されてるよね?」
「税理士だから、やっぱり信頼されるでしょう?」
家族や知人から、そのように言われることがあります。
ただ、税理士だからといって、無条件に信頼されるものではありません。
お客様は、税理士のことを、良く観察していらっしゃいます。
ただ、その観察のポイントや強弱が、人それぞれなんですね。
今回は、お客様が、どのような視点で、
「この税理士、信頼できるのかな?」
とお考えになられているか、考えてみたいと思います。
※大崎駅からの風景。原稿執筆のために、税理士会館内にある図書館に行ってきました。
開業歴はどれくらいか?
税理士業だけでなく、他の仕事でもそうなのでしょうが、事業の継続期間が、一つの信頼のバロメーターになるでしょう。
「石の上にも三年」といったことわざがありますが、私は、今の時代は「石の上にも10年」だと思っています。
実際、税理士や弁護士が開業し、5年ほど頑張って、勤務社員に戻るといったことも珍しくありません。
また、開業して事業を継続できているということは、顧客がいる、ひいては信頼を得ているという証明になります。
見た目はどうか?
「人は見た目が9割」なんて本がありましたよね。
私が開業して11年がたちます。
その間、多くの中小企業の社長様や、資産家の方々を見てきました。
そこで感じるのは、
「服装・身なりが、その人の考え方・社会性を表す」
ということです。
例えば、ビジネスの世界で、派手な色・コーディネートをされている方がいたら、取引先から「ん?」と思われてしまうことでしょう。
税理士も同じです。
「税理士=マジメ」と、世間では思われているのですから、清潔感ある服装でいるべきです。
別に高い服を着る必要はないんです。ホワイトやブルーのシャツといった、清潔感ある服装であればいいと思います。
※現に、私も、あるブランドの白シャツを、6枚とか、まとめ買いしています(考える時間が面倒なので)。
また、個人的には「若手税理士はヒゲ NG」だと思っています。
年配になり、お客様がしっかりつき、貫禄がある税理士先生であれば、ヒゲも良いのかもしれません。
しかしながら、多くの女性はヒゲを嫌います。
世の中の半分は女性ですから、 ヒゲを生やすと、潜在顧客の半分を失います(^^ )
清潔感ある服装を心がけましょう。
事務所を借りている
たまに、開業を予定している税理士先生から、
「やっぱり事務所を借りた方が良いのでしょうか?」
というご相談を受けることがありますが、ケースバイケースだと思います。
例えば、お客様が小規模法人や、個人事業者だけであれば、自宅兼事務所でもいいと思います。
また、専門性が高い税理士先生(例えば組織再編や国際税務のスペシャリスト)は、打合せも、相手先の会社や税理士事務所で行えばいいわけですから、こちらも事務所を借りる必要はないかもしれません。
ただし、資産家(不動産オーナーや、多くの金融資産を持つ方)の方とお付き合いがあるような方は、事務所を借りた方が良いのかもしれません。
というのも、これらのお客様は、外で話せないこと(家族の悩み、資産運用の相談)を、お話しになられるからです。
私の場合、小規模事業者様、資産家のお客様、それぞれ混在しているため、とりあえず事務所を借りていますが、あと10年くらいしたら、IT技術も更に進歩しているでしょうから、事務所を借りないという選択肢も出てくるかもしれません。
なお、余談ですが、弁護士先生の場合、単独なり、共同なりで、事務所を借りている先生の方が多いと思います。
というのも、街の弁護士先生(いわゆる「マチ弁」の先生)は、相続・離婚・労働問題といったように、個人が絡む事件を取り扱います。
そうすると、相手方から「良くない感情」を抱かれることもあり、最悪、身の危険を感じることもあるそうです。
そのため、事務所を借りる弁護士先生が多いと聞いています。
※隅田川にて。ひとり税理士である私とかぶるな~、と思いつつ撮影。
高い専門性がある
他人には真似のできない、高い専門性がある税理士先生は、信頼できるといえるのでしょう。
ただし、それは相手(お客様)が法人の場合に限定されると思われます。
例えば、組織再編や移転価格税制といった、高度な税務判断について、相手先の法人は、その価値を分かってくださり、信頼に繋がるでしょう。
しかし、「私は不動産に詳しいです。」「相続に詳しいです」と、個人のお客様にいくら伝えても、信頼が大きくプラスされるかというと、そうでもないと思います。
本を出している・講演をしている
出版や講演をしていると言うと、同業者(税理士・弁護士)のウケはいいのですが、肝心のお客様にとっては、どうでしょうか?
個人的には、「ちょっとプラスになるくらいかな?」というのが実感です。
また、出版にもいろいろあります。
自費出版の形態でも良い本はありますし、商業出版でも駄目な本(条文や判例の丸写し)といった本もあります。
お客様から見ても、信頼への決定打にはなりませんから、必ずしもこだわる必要はないでしょう。
お金にガツガツしていないこと
以前、ある女性のお客様(資産家・60歳代女性)から、このような相談を受けたことがあります。
「相続手続きで、ある司法書士先生を紹介されたのですが、その先生は目がギラギラされていて、とにかくお金お金っていう雰囲気だったんですね。石橋先生の方で、お知り合いの司法書士先生がいれば、ご紹介いただけませんか?」
その女性は、ある難しい手続きを司法書士に依頼する必要があり、お知り合いから司法書士先生を紹介いただいたらしいのですが、実際に会ってみたら、話し方や雰囲気がとにかくお金お金といった雰囲気だったそうなんですね。
特に女性のお客様は「お金お金という人」に敏感だと思います。
※あくまで私の個人的な意見ですが。
お金のことばかり考えていると、知らぬ間に、ウルトラマンのカネゴンのような顔になっているんでしょうか(^^ )
最初から、お金(報酬)の話しをすると信頼されない。
かといって、きちんとお金の話をしておかないと、業務の最終段階になって、報酬トラブルにもなりかねません。
この辺りは難しいところですが、お金お金しか考えてない人は、どうしてもそれが表情や仕草に出てしまうようです。
税理士が大きな事務所を経営していくと、「給料を払えるのかな?」「事務所家賃は払えるのかな?」と考えるのは自然なことです。
しかしながら、充分に儲かっているのに、更にお金お金と考えると、お客様はそれを見抜きます。
(私はあまり儲かっていませんが)他山の石として気をつけたいと思います。
家族がいる
私が、相続手続きについて、普通の税理士よりも多くこなしてるからかもしれませんが、高齢のお客様(特に女性のお客様)は、担当する税理士のプライベートを深くお聞きになりたいようです。
具体的には・・・
- 結婚していますか(指輪で確認できる場合は省略)
- 奥さんはおいくつぐらいなんですか
- 奥様とはどこでお知り合いになったのですか
- お子さんはおいくつぐらいですか
などなど。
お客様(特に女性のお客様)にとっては、結婚しているか、子供がいるか、というのが、信頼のバロメーターになっているような気がするのです。
※あくまで私の個人的な感覚です。気分を害される方がいらっしゃったら、お詫び致します。
私は、結婚せず、子供のいない税理士の方が、税理士としての技量が上である可能性が高いと思います。その分だけ、勉強する時間がありますからね。
ただ、私自身、結婚して子供もでき、感じたことがあります。
それはお客様の気持ちに先回りできるということです。
「税金が高い方の計画に興味を持たれているが、その意図は、残された奥様の生活費に困らないようにしたいんだな」
「無理して土地を維持するのは、先祖代々、子々孫々、この土地を護りたいからなんだな。」
そう、理解できるようになってきたのです。
お客様のお気持ちの前では、どんな節税対策もかすんでしまいます。
税理士として、最低限の節税策を提案はしますが、それでもやりたくないということであれば、そちらを優先すべきなんでしょうね。
※東京駅にて。新幹線で奥さんの実家に帰省しました。
私なりに、お客様から信頼される方法について考えてみました
惰性で仕事するのはなく、「このお客様から信頼されているかな?」と、常に考えて仕事をすることが大切だと思います。
※ただ、そんなの、独立しないとできませんよね。勤めてたら、早く帰って一杯やりたいですしね(^^ )
ところで、お客様から信頼されることも嬉しいのですが、同業の税理士から信頼されることも嬉しいものです。
数年前のことでしょうか。
ある税理士の集まり(50人くらい)の際に、 ひとまわりくらいは年下の若手男性税理士先生から、こう言われたことがあります。
「もし僕が事業を始めたら、間違いなく石橋さんにお願いしたいと思ってますよ。勉強していて、信頼できる人って、少ないですからね・・・」
なんか、自分で書いていて照れますね(^^ )
また、最近、3歳くらい年上の税理士先生から、
「もし僕が死んだら、僕の相続税申告をお願いしますね。」
と言われたこともあります。
これも嬉しかったですね。
相続税って、その方の家族構成と、財産、すべてを見るわけですから。
お客様から信頼される税理士になるためにはどうすればいいのか。
結局、先ほど挙げた事項をもとに、地道に実績を積み上げるしかありません。
「ローマは一日にして成らず」と言います。
私のローマは、 開業して11年経ってもまだまだ完成する見込みさえないのですが、これからも一歩ずつ頑張っていきたいと思います。