司法書士会の研修講師をつとめました

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専門家からお声かけ頂いて、研修会の講師をすることがあります。

今回は、東京司法書士会の中央支部様からお声かけ頂きまして、司法書士先生向けの研修会講師を勤めさせて頂きました。
※申込者は80名を超えたそうです(実際に参加頂いた司法書士先生は、その8割前後でしょうか)。

司法書士先生は、普段は税務に接する機会が少なく、難しい税務問題は税理士に相談している方が多いと思います。ですが、そんな場合でも「税理士に相談した方がいいのか?しない方がいいのか?」
といった判断基準が必要です。今回の研修会では、司法書士業務(会社登記・不動産登記)で注意すべき税務問題についてご説明させて頂きました。

※某公的施設のセミナールームにて。

司法書士先生と税務との接点

税理士が司法書士先生にお仕事をお願いする機会は多いです。
例えば、こんな感じになるでしょうか。

  • 会社を始めたいという相談が来た!
    →司法書士先生に法人設立登記をお願いします。
  • 不動産を相続した(贈与した)とう相談が来た!
    →司法書士に相続登記をお願いします。
  • お客さんに過払金(借金)がありそう?
    →過払金請求の検討をして頂く(ただし140万円未満の場合)

上記のようになるため、司法書士先生と税理士とは、普段から接点があるのですが、税金を勉強される機会も少ないとのことで、今回の研修講師にお招き頂きました。

研修テーマをどう絞るか?

研修時間は3時間でした。

丸一日あれば、色々な事例を交えて、おもしろエピソードをお伝えしたいのです(^^ )。
ですが、限られた時間内で多くをお伝えするには、内容設定が大切です。

今回、ご依頼頂いたテーマが、

「司法書士の業務に役立つ税金に関する研修会」

でした。

なので、私なりに頭をひねって、次のような項目を挙げて、ご説明しました。

Ⅰ.税金の概要
1.国税(法人税・所得税・消費税・源泉所得税・登録免許税・印紙税)
2.地方税(事業税・住民税・不動産取得税・固定資産税・事業所税)
3.その他(社会保険料・労働保険料)
4.税務の特徴(期限管理・時効・各税目の横断検討が必要等)

Ⅱ.法人税務の注意点
1.法人設立時
(1)法人設立のメリット・デメリット
(2)資本金の決め方(均等割の税金・融資の観点から)
(3)定款の記載事項(決算期・株主構成・総会招集時期等)
(4)設立時に提出すべき届出書とその期限(税務署等)
2.法人運営時
(1)就任登記・重任登記・退任登記と税務(役員報酬・退職金等)
(2)会社と税理士に説明して頂きたいこと(登記期限の管理・罰金等)
3.廃業時
(1)解散登記と税務(解散日の決め方・法人種別による事業年度の違い)
(2)清算結了登記の必要性(税務の視点から)

Ⅲ.個人税務の注意点(不動産関係を中心に)
1.不動産を売却した時の税金
(1)所得税(譲渡所得税)の概要
(2)特例関係(居住用財産の譲渡特例を中心に)
(3)みなし譲渡課税(個人→法人で低額譲渡をした場合の問題点等)
2.不動産を購入したときの税金
(1)住宅ローン控除
(2)契約関係書類の保管の必要性
3.不動産・金銭等を贈与した時の税金
(1)贈与税の概要
(2)贈与税の特例(住宅資金贈与・配偶者控除・相続時精算課税)
(3)不動産の名義変更と税金(更正登記との関係等)

Ⅳ.相続税務の注意点
1.相続税の概要
2.申告期限(10ヵ月以内)までに遺産分割が終わらない場合の注意点
3.税務署へ提出する書類(戸籍謄本等の添付書類を取得する際の注意点)
4.遺産分割協議書・遺言書への記載事項(税務を中心に)
5.民法改正(相続編)に伴う税務への影響

Ⅴ.成年後見人と税務

いま振り返ってみると「テーマ多過ぎ!」ですなぁ(^_^;)
3時間じゃ、終わりませんね・・・。
※お伝えしたい!という熱意は、先生方に伝わったと思います(^^;)

ところで、他の専門家向けに税務の研修会をする際は、その専門家の実務書を一通り読んでおくと良いでしょう。
※例えば「新人司法書士が登記業務で気をつけるべきポイント」的な本です。

そうすることによって、

  • その専門家の主要業務は何か?
  • その専門家の知識はどこに偏っているか(民法、会社法等のどれが専門か?)

といったことがつかめてきますので、そこと税務とが重なる部分(税務の事故が起きやすい論点)を探すわけです。

・・・と、言葉で言うのは簡単ですが、これは結構難しいです。
というのも、広い税務の知識が必要となるからです。

以下は、今回取り上げた内容の一部ですが、これって結構、難しいテーマだと思いませんか?
※税理士なら、大変さがお分かり頂けるかと。

  • 解散登記と事業年度と清算業務の具体的注意点
  • 清算結了登記しないとどうなるか?
  • 非居住者向けの家賃支払・購入代金支払時の源泉所得税漏れ
  • 更正登記と贈与税との関係
  • 遺産分割協議書と税務との接点(代償分割、小規模宅地等の適用同意)
  • 空き家の3,000万円控除と成年後見業務との接点・注意点
  • 民法改正と税務(そのなかで司法書士先生が気をつけるべき点)

これが弁護士先生向けの研修会だと、債権の時効(貸倒損失の計上基準)や、相続税、株価評価等といったところになるんでしょうか。

その専門家が何を欲しているのか?どんな問題が起きやすいか?。
具体的にイメージして、研修テーマを考える必要があります。

研修前の準備は抜かりなくすべき

何事も事前の準備が必要です。

研修会の講師を勤める際は、以下の点に注意するようにしています。

1.丁寧なレジュメ作成

専門家向け研修会の注意点ですが、まずは、一読しただけで内容が分かるレジュメを作りましょう。
というのも、相手は「専門家」であって、難しい資格試験をくぐり抜けてきた方達です。
文章を読めば、大抵のことは分かります。

ですが、箇条書き、平易な言葉、図を使って、とにかく分かりやすく作る必要があります。

私がよく参考にしているのが「宅建試験のテキスト」です。
※私はTACの問題集で、宅建試験に合格しました(^^ )

今回は3時間なのに、約60ページのボリュームになってしまいました(T_T)
ですが、内容については、分かりやすく書いたつもりです。
※ある先生から、研修会終了後に「今日、研修会に来れなかった人は、残念ですよね~。このテキスト、もらえませんからね!」とお褒めの言葉を頂きました。

分かりやすいテキスト作りを心掛けましょう。

2.読書会にしない

よくあるのですが、有名な先生の研修会を聞きに行っても、単に「読書会」で終わってしまうことがあります。
※読書会とは、「単にテキストを読むだけの研修会」という意味です。

さきほども申し上げましたが、専門家向けの研修会は、文章を読める人が集まっているのですから、読んでも分かることは、読み上げても意味がありません。
休憩時間にでも、読んどいてもらいましょう。
※本当に重要な文章(法律の文言等)は、確認するため、読む必要がありますが。

そうではなくて、講師の先生が、実務で経験した事例(特に失敗例)を説明して欲しいんですよね。
そうでないと、本当の意味での「研修」にならないと思います。

これは何も私の思いつきではなく、ある有名な税理士先生の口癖なんですよね。
「はい、ここの部分は、テキスト読まなくていいですよ~。具体的に言います。読んでるだけだと、単なる読書会になりますからね!」

私もそれを実践すべく、
「はい、ここは箇条書きの要件を読むと長いんで、もう、イメージでご説明します。あるボロボロの家に、お婆ちゃんが一人で住んでいました・・・」
という、日本昔話を意識して?空き家特例の3,000万円控除を説明しました(^^ )

事例を使って、受講生の顔を見て説明する。
これを心掛けましょう。

※研修開始前の会場にて。レジュメの最終確認。

3.早めの会場入り

当たり前ですが、早めに会場に着くことが大切です。

以前、別の研修会で、ちょっと調子にのって、
「ギリギリに行っても大丈夫だろう!会場、近いし!」
ということをしたら、危うく遅れそうになったことがありました。

なので、それ以降は、早めに会場に着くことにしています。

※早めに施設に到着し、会場案内を確認。

また、お手洗いも済ませておくといいでしょう。

予定時間に終わるのが本当のプロ

今回、公共施設での研修会ということで、

「石橋先生、夜9時に会場が閉まるので、8時50分までに終わらせてください」

と、事前にアナウンス頂きました。

それをもとに、練習した訳ですが、事前練習では時間内に収まっていたのですが、本番では10分オーバーして9時になってしまいました(-_-)
※施設を管理しているおばちゃんお姉様から「早く終わらせてください!」という感じで、強い口調で怒られてしまいました・・・。まあ、早く帰りたい気持ちは分かるんですが・・・。

ですが、これは私のミスです。例え10分でもオーバーしてはいけません。
皆さん、予定があるわけですから。

ところで、研修会が終わって、ある税理士先生からいわれた言葉を思いだしました。

「石橋くん。講師が一番トクするんだよ。だって、当日の研修内容が一番身につくのは、それを調べ上げた講師なんだから。」

明言ですm(_ _)m
今回の研修も、レジュメを作る過程で、自分自身が勉強できました。
私も、さらに精進して、頑張りたいと思います。

来月から、税務研究会の月刊誌「税務QA」で新連載が始まります。

長丁場ですが、こちらも頑張りたいと思います。

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