どんな仕事でも「業務効率化」は大切です。
これからの税理士業では「業務効率化」ができるかどうかが、生き残れるカギになります。
その一環として、2011年の開業時から「マルチディスプレイ(デュアルディスプレイとも呼びます)」を実践しています。
今回は、マルチディスプレイ(デュアルディスプレイ)について、考えてみました。
※筆者の執務スペースにて。
税理士と他の士業との仕事を比較してみると・・・
仕事がら、他の士業の先生(弁護士、司法書士、社労士、行政書士)と話すことがあります。
これらの先生にパソコンの使い方について聞くと、税理士業と共通している部分もありますし、共通していない部分もあります。
業務効率化のためには「他の人達はどうしているか?」を常に意識する必要がありますので、私なりに、普段から色々と聞いています。
その結果、他の士業の先生方は、税理士よりもマルチディスプレイを使っている人が少ないな、というのが私の印象です。
これには、次のような理由があると思います。
「画面」から「画面」へ転記する作業が少ない
弁護士先生が裁判所やクライアントに提出するための資料を作るとしましょう。
それには、様々な資料に目を通し、検討結果を書類にまとめる必要があります。
その際、大きな会議用テーブルに資料をばぁっと広げ、それを全体で俯瞰して眺めて、「これからどのような資料を作るのか?」といったことを考えるそうです。
そして、書類作成の方針が決まったら、その資料を一つ一つ手に取って、文章や図にまとめるといった作業になるそうです。
そうすると、基本は「1資料→1画面」といった作業内容になりますから、パソコン画面の前に大きな机は必要になるかもしれませんが、マルチディスプレイを使う必要があまりないのかもしれません。
※これは司法書士先生、社労士先生、行政書士先生も同じだと思います。
ですが、税理士の場合は、
- 会計ソフトの数値→法人税別表(または内訳書)
- 会計ソフトの売上数値→消費税申告ソフト
- 路線価図→土地評価ソフト→相続税申告ソフト
- 上場株式の終値→財産評価祖ソフト→相続税申告ソフト
といったように、「画面(ソフト)」から「画面(ソフト)」へ、数値(または文字)を転記する作業が多いんですね。
※もちろん「財産評価ソフト→相続税申告ソフト」といった連動もできますが、それにも限界があります。
1画面しかないと、いちいちマウスでソフトを切り換えないといけませんから、面倒ですし、入力間違いが起きます。
ですから、税理士業にはマルチディスプレイが必須だと思います。
別に、他の士業の先生方がITに疎い、という訳ではありません。現に、ファイル共有ソフトやチャットワークをバンバン使って稼いでいらっしゃる先生もいるからです。要は、仕事内容の違いですよね。
※以前、ある弁護士先生に私のPC環境(3画面)をお見せしたら、その先生から「石橋先生、何か、デイトレーダーっぽいすね!」と、おっしゃって頂きました(^^ )
預かる資料、作成する資料の「量」が違う
税理士業のもう一つの特徴として「預る資料の量が多い」ということが挙げられます。
例えば、顧問先の会社様から記帳代行を請け負うとしましょう。
そして、その資料を全てA4サイズでコピーしたとします。
そうすると、次のような資料の量になります。
- 現金出納帳
・・・毎月1枚~5枚?×12ヶ月分 - 預金通帳
・・・毎月1枚~5枚?×12ヶ月 - 売上資料、仕入資料
・・・毎月1枚~10枚? - 決算時の資料
・・・数十枚?
そうすると、1顧問先ごとに年間数十枚~数百枚になります。
また、税務申告書も、1件で数十枚になりますから、これらを合わせると、1顧問先で年間100枚を超えるかもしれません。
これらを紙で管理するのは大変なので、最近はパソコンにスキャンしてしまって、2画面(または3画面)で、資料の内容を確認しながら入力することも多いんです。
この場合、やはり2画面を使う必要性がでてきます。
これも、税理士業の特殊性といえるでしょう。
※なお、余談ですが、他の司法書士先生や社労士先生の事務所に(遊びに?)お邪魔することがあります。
その事務所内を見ても、やはりマルチディスプレイ化している先生は少なくて、1画面の先生が多かった印象を受けます。
何画面が良いのか?
マルチディスプレイ(デュアルディスプレイ)が良いことは分かりました。
では、何画面が良いのでしょうか?
これには諸説ありますが、私は、
- 普通の税務申告・・・2画面
- 相続税や難しい事を調べるとき・・・3画面
という結論に達しました。
なお、4画面以上ですと、逆に作業効率が落ちる気がします。というのも、人間の目は「ヨコ」に追うのは得意ですが、「タテ」に追うのは苦手とされているからです。
2画面の場合
例えば、法人税申告の場合、こんな感じで使う人が多いと思います。
2画面の場合は、
- 左に税務申告ソフト
- 右に会計ソフト
といったように配置し、利益や交際費の数値を転記したりするでしょう。
または、会計ソフトから内訳書ソフトに各残高を転記したりもします。
この使い方だけでも、充分、業務効率化が図れると思います。
また、弥生会計を2画面に渡って広げ、左側で入力、右側で仕訳検索をする、といった使い方もありかもしれません。
さらには、所得税の申告ソフト不動産所得を入力する際は、左に税務申告ソフト、右にエクセル表(家賃集計結果)を配置したりすると、青色決算書の家賃入力が楽になると思います。
ここまでは、実践されている人が多いと思います。
3画面の場合
相続税の計算をする際は、3画面を使うと便利です。
少し分かりづらいのですが、左から、
「ドキュワークスデスク」「土地CADソフト」「顧客フォルダ」
と、並べています。
真ん中で土地評価をし、その出力結果を左の「ドキュワークスデスク」に並べ、一番良くできたものを、右の「顧客フォルダ」にしまう。
こんな使い方もしています。
※もちろん、左に「路線価図」や「グーグルマップ」を配置することもあります。
土地評価の流れとして、
- 地図等で所在を確認
- 形状を確認
- 路線価を確認
- 不整形地図を作成
- 容積率等を確認(役所ホームページ)
※もちろん現地調査も欠かせませんが。
といった流れになり、資料が膨大になることがありますから、3画面で資料を開ければ、効率がグンと上がります。
※あくまで私の個人的感覚ですが「左から右に作業が流れるようにする」と、効率が良いように感じています。左から作った仕事を、真ん中の画面で加工し、最後は右のフォルダにしまう、といったイメージです。
相続税の場合は、他にも多数の資料(預金通帳、債務控除の資料等)がありますから、3画面のメリットは大きいです。
また、こんな使い方もあります。
税法の条文を調べる際、ホームページからワードに貼り付けて、
「本法」「施行令」「施行規則」
という順番に配置し、重要な部分に色づけしてみる、といった使い方もしています。
※このあと、実際に紙に印刷します。紙で読まないと、見落としがあるかもしれませんので。
調べ物をするときは、「TAINZ」や「国税不服審判所」のホームページを調べたりもしますが、その際にも、同時に開くと作業効率がアップしますのでオススメです。
画面を目一杯使わずにショートカットを置いておく
2画面や3画面で使うときは、作業窓(ウィンドウ)を画面最大化せず、一部、余白を残しておくといいかもしれません。
例えば、画面の印刷結果を、紙ではなくPDFにしたとします。
そのPDFファイルを、デスクトップ上のフォルダに保存するよう設定しておけば、このフォルダから、メールに添付できたり、顧問先フォルダに保存できたりしてオススメです。
その際に、ソフトのウィンドウが最大化していると、デスクトップ上のショートカットが開けませんので、画面を最大化せずに作業することをオススメします。
※そのためには、小さいディスプレイではなく、ある程度、大きなディスプレイを使う方が良いと思います。
私はこの1つ前の世代である「EV2455」を、もう4年くらい使っていますが、画面も適度に広く、目に優しいので、オススメです。
※EIZO(ナナオ)のモニターは、本当にいいですね(^^)
また、フォルダへのショートカットだけでなく、プリンターへのショートカットもオススメです。
私は、相続税の申告書をまとめて印刷する際には、全てカラーモード(白黒とカラーを自動で判別して印刷してくれるモード)で印刷しています。
というのも、普段からカラーモードにしていますと、白黒で良い書類もカラーで出てしまい、カウンター料金が相当上がってしまうからです。
※原稿がカラーですと、カラーで出力されてしまいます。
相続税の資料は、
- 預金通帳
・・・白黒(ただし一部、黄色で注意書きを書いている) - 土地評価資料
・・・路線価図は原稿に黄色でマークしている。土地図面はカラー部分あり。 - 債務控除資料
・・・領収書等に分かりやすく色づけしている
という感じで、白黒とカラーとが混在しています。
相続税申告書の原稿を一気に印刷する際は、この切替のため、一時的にカラーモードにしたいので、プリンターのショートカットをデスクトップに置いているんです。
※この意味からも、ソフトは画面最大化して使わず、デスクトップの余白を少し残しています。
モニターアームは必要か?
モニターアームとは、
「画面後ろに可動式のアームを付けて、机の端に挟み込む」
というシロモノです。
これを使うメリットですが、ディスプレイの下に隙間ができます。
こうすることによって、資料をディスプレイの下に広げられますので、机を広く使うことができ、これも作業効率アップにつながりますので、ぜひ使いましょう。
※モニターアームは、モニターの規格、机の厚みとの相性がありますから、慎重に購入してください。
広いテーブルがあれば、なお良い
2画面や3画面のディスプレイを設置するには、広いテーブルも必要になります。
この場合、ラウンドテーブルの設置も検討すべきだと思います。
ラウンドテーブルとは、端っこが出っ張っているテーブルです。
このテーブルですと、はみ出た部分に資料を余計に置くことができて、これまた作業効率が上がるので、オススメです。
難しい事は自分にしかできない。だから作業効率にこだわる。
税理士事務所、会計事務所の働き方が、変わりつつあります。
以前の事務所スタイルは、税理士1人(所長)がいて、社員に単純作業(記帳代行、簡単な決算書作成)を多くやらせる、というのが主流でした。
ですが、IT化が進み、単純作業はパソコンやクラウドできるようになってきました。
また、都市銀行と同じく税理士事務所にも整理統合の波が来ていて、大手事務所は、地方の税理士事務所をどんどん買収しています。
その結果、中途半端な規模の事務所は生き残れなくなる、と言われています。
そのそのなかで、街の税理士がするべきことは、
「業務効率化を図り、開業税理士にしかできないことをする」
ということです。
私時自身の経験を振り返ると、
「勤務時代は、適当に仕事をしていたなぁ~」
ということが思い出されます。
※別に、本当に適当に仕事をしていた訳ではありません。他の人よりも真面目にやっていたと思います。ですが、開業している現在の自分から考えると、どうしても甘さがありました。これは私だけでなく、独立した他の分野の個人事業主、社長様、いずれも感じることだと思います。
(開業した)現在の私にしかできないこととは、
- お客様とそのご家族様の幸せを考える
- 相続税の2手3手先を考える
- 他の税理士の相談にのる
- 弁護士先生からの難しい税務相談にお答えする
- (ある程度のことであれば)税務相談に即答できる
※日夜努力すれば、その「ある程度」の範囲がどんどん広くなっていきます。
といったことになると思います。
作業を効率化し、自分自身にしかできないことをする。
それが、自分のためでもあり、お客様のためでもあります。
以前、ある大学の先生とお話ししたことがあります。
その先生は法学分野なので、やはり「法律が一番の学問である」という考え方でした。
※正直、ITやプログラミングを軽視したような発言をされていました。
ですが、法律・判例をいかに知っていようとも、それを実務に落とし込まないと、我々実務家にとってもは何の意味もありません。
そのためには、IT・プログラミングは必須です。
※偉そうに言いますが、私のプログラミングはMSXで止まっていますが(^^ )
「実務でいかに知識を生かすのか?」
その一歩として、マルチディスプレイは有効です。
ぜひ、始めてみてください!