税理士であれば、お客様に「説明書」や「報告書」を使って報告することがあると思います。
※税理士によって、書類のタイトルは違うと思いますが。
その税理士、その事務所ごとに色々な作成方法がありますが、私が意識しているのは、次の点です。
- 論点を小分けにして書く(箇条書きを多くする)
- 調べ尽くして書く(想定される可能性に全て触れる)
- お客様の選択肢を箇条書きにする
※銀座松屋に展示されていた人形。
論点を小分けにして書く(箇条書きを多くする)
例えば、お客様から次のような質問を頂いたとします。
「高齢の父(90歳)が持っている賃貸アパート(土地・建物)が古くなってきたので建て替えようと思います。ですが、銀行融資が受けられません。どうすれば良いでしょうか?」
お話しを聞き、問題を整理すると、
- 建物の名義が父のままでは融資を受けられない(息子や同族法人に変更する必要あり)
- 土地の名義は父のままで良い
ということが分かりました。
この場合、次のパターンが考えられます。
- 土地・・・父、建物・・・息子
- 土地・・・父、建物・・・同族法人
これを、税法、民法に分けて整理すると、更に次のようになります。
- 税法
・・・原則、地代を払わない方が良い(使用貸借でないと借地権の認定課税あり)
・・・地代を払う場合、父の不動産所得が増え、父の相続財産も増える
・・・使用貸借なので、小規模宅地の特例が使えなくなってしまう
・・・同族法人の場合、無償返還と相当の地代を検討
・・・その場合の地代設定額(小規模宅地の特例可否)
・・・同族法人の株価にも注意する - 民法等
・・・土地について遺言書を書かないと、相続人が複数いる場合、土地所有者=建物所有者とならず、権利が不安定になる
・・・遺言書の場合、遺留分に気をつける必要あり
・・・他の相続人に対して知らせる必要はないが、仲が良いなら知らせるべき
この場合、「税法」の問題と「民法(及びその他の周辺論点)」とに分けて、なるべく箇条書きを多用して、説明書を作るようにした方が良いと思います。
我々は、税金の勉強はしていますが、
「人に伝える文章の書き方」
といったものを学んでいません。
※大手企業に就職すれば、そこでプレゼン文書の作成トレーニングをしてくれるのかもしれませんが、残念ながら、職人(=税理士)の世界には、そんなご丁寧なものはないんです(-_-)
また、我々は文章を読み慣れていますが、普通の方であれば、文章は2行読むのが限界です。
ですから、箇条書きでタイトルを書いたら、その直後の説明分に「結論」を早めに書くようにしましょう。
調べ尽くして書く
お客様から分からない事の質問を受け、その調査結果を書面にまとめる場合、
「調べ尽くす」
ということが大切です。
※医療法人関係の書籍
以前、医療法人関係の質問・疑問点がいくつか生じました。
短期間で調べる必要があったので、とりあえず、色々な書籍を読み、実務セミナーにも参加しました。
上記の書籍は、そのとき購入したものの一部になります。
※公費負担(生活保護等の請求点数の計算)の書籍を購入した税理士って、ほとんどいないと思いますが・・・。
医療法人は、税法だけでなく、医療法や、さらには相続(事業承継、揉めている場合の持分相続)の問題もあり、とても難しい分野になると思います。
私は、医療分野に特化している訳ではありませんが、それは言い訳にはなりません。
ご依頼を頂き、自分に調べられそうであれば、全力で調べましょう。
税理士だけでなく、弁護士先生や司法書士先生といった、知識を専門とする仕事では、必ず「調べる」という作業が発生します。この場合「調べ尽くす」ことが大切です。弁護士先生の場合は、事務所に就職した際、研修や先輩から「調べ方」を教えてもらうことができるかもしれません。ですが、税理士の世界では、まだまだ「丁稚奉公(でっちぼうこう)」的な世界で、先輩や上司に「教えてください~」とお願いすると、「オレの仕事を見たり、過去の資料を見たりして、自分でおぼえろ!」と言われてしまうことが多いと思います。※今はどうか... 税理士が「調べ尽くす」ためには、どうすれば? - 東京都中央区日本橋の税理士×ピアノ弾き語り |
※ただし、大規模な組織再編成税制は、個人の税理士では難しいと思います。その場合は、専門家の先生にお願いした方が無難だと思います。
そして、調べた結果を、とりあえずエバーノートや、PCのメモ帳等で書き留めておくことが大切です。
例えばですが、こんな感じです。
- 土地建物の無償返還、相当の地代問題
- 株価算定時の税法上の時価、鑑定書上の時価
- 遺留分の問題解決?
- 理事長の非医師問題解決方法?
- 医療法人が解散する場合の必要期間
- 出資分払い戻し課税の解決方?・・・・・
この論点出し、難しい問題であれば、時間をかけて行うことをオススメします。
というのも、期限ギリギリにやりますと、論点の出し漏れ?が出てきて、後日お客様から、
「**について説明を受けてなかったよ!」
と、お叱りを受けることにもなりかねません。
難しい問題ですと、論点は数十個以上出てくるでしょう。
※私の場合、難しい問題の場合は、1週間くらいかけて、少しずつ論点出しをしていくようにしています。
ですから、時間をかけて論点を出し尽くしてから、説明書(報告書)を書くようにしましょう。
※新しくできた「東京ミッドタウン日比谷」にて。
お客様の選択肢を箇条書きにする
私は説明書の最後に、再度、お客様の「選択肢」を記載するようにしています。
具体的には、
「再度のご説明になりますが、
・A案についてのメリット、デメリットはこうなります。
・B案については・・・・」
といったようにです。
今までのご説明で、開始から1時間~2時間は経っているかもしれません。お客様はお疲れです。
ですから、冒頭で説明した内容を、再度、簡潔に説明することにより、お客様の考えを整理して頂くことが必要です。
そのための、最後に「選択肢」を、再度ご説明する必要があると思います。
この選択肢をコンパクトに記載するためには、やはり「調べ尽くし」て論点を出し尽くしておく必要があると思います。
結論を急がない
今まで、お客様にきちんとご説明するための「説明書」や「報告書」について、考えてみました。
ところで、私がいつも心掛けているのは、
「結論を急がない」
ということです。
書類を使って説明し、これで
「A案にするか、B案にするか、決めてください!」
と、税理士は(特に若手の税理士先生は)結論を急ぎます。
※昔は、私もそうでした(^^)
ですが、何かを決断するのには、相応の時間が必要です。
以前、私の実家が持っていた賃貸不動産を売却したことがあります。
この「売却」という結論が出るまでに、数年かかりました。
私は税理士なので、両親から「色々考えて結論を出してくれ」と言われ、私なりに一生懸命考えました。
「売却しないで全面改装し、このまま賃し続けた方がよいのでは?」
「いや、売却して、気持ちの整理をつけた方がよいのでは?」
まあ、色々な考えが出てきますよね。
※想像力だけは豊かなので(^^)
税金やお金を生業としている私(税理士)でさえ、決断に時間がかかるのです。
ですから、お客様には、結論を急がせないでください。
※ただし、税金には期限がありますので(例えば、相続税の申告期限までに遺産分割しないと税額軽減が使えない等)、そこがジレンマではありますが・・・。
そのためには、
- 早めに
- 簡潔に(ポイントが整理されている)
ということを心掛けて、お客様に説明書をお渡し、説明するようにしてください。
※とはいっても、私もまだまだ修行中の身でありますが・・・。
今日も一日、頑張りましょう!