※本記事は2018年に掲載しましたが、色々考えた末、現在は「Jw_cad」を利用しています。その経緯については、以下のYouTubeで説明していますので、よろしければご覧ください。
※以下の記事は2018年当時の見解・意見になります。
税理士が相続税を計算する際に「土地評価ソフト」を使うことがあります。
土地は、不整形地や近似整形地を上手く考えると、評価額が安くなり、ひいては相続税の節税につながります、
以前は、手書きで土地図面を書く税理士先生も多かったと思いますが、最近は各ベンダーから「土地評価ソフト」が販売されています。
私は、現在は、ベンダーが開発した専用ソフトではなく、「CADソフト」を使っています。
※CADとは「computer aided design」の略です。(aidedは支援という意味)。要は、建築関係の図面を書くためのソフトです。本来であれば、設計士さんや、土地家屋調査士さんといった、図面の専門家が使うソフトになります。
土地評価ソフトを使い始めてから約8年。
悪戦苦闘した結果、現在はCADソフトを使っています。
※私が購入して使っているCADソフト「TurboCAD(TurboSketch)」
税理士が土地評価ソフトを使う場面とは?
相続税を計算する際、「土地の評価額」を計算する必要がありますが、その際は、次の点を考慮する必要があります。
- 不整形地の取り方
- 近似整形地の取り方
- 都市計画道路はどこまでか?
- 容積率の境は?
※これ以外にも、様々な注意点があります
これらの検討結果を、図面を使って税務署に説明する必要があります。
「この土地は、**のような点があるから、定価から値引き?してください」
というようにです。
図の作り方は税理士先生ごとに違うと思いますが、私は、
- 土地の地番
- 利用目的(自用地か、貸家建付地か等)
- 土地の地積
- 正面、裏面等の区別
- 近似整形地
- 無道路地の開通道路等
といった情報を図面に書き込んでいきます。
※ここでは不整形地の評価方法について説明しませんが、興味がある方は「間違えやすい相続税の土地評価(4)「不整形地の4つの方法を検討していますか?」を参考にしてみてください。
このため、税理士側で土地図面を作成する必要があります。
その土地図面を作るためのソフト(土地評価ソフト)について、レビューしてみたいと思います。
※私なりの主観が入っていますので、評価のご判断は、各先生方にお任せします。
蔭地名人(かげちめいじん)
「蔭地名人(かげちめいじん)」と呼ばれるソフトがあります。
※エッサムという、会計事務所向けの事務用品を作っている会社が、相続税の土地評価のためのソフトも作っています。
※エッサム公式ホームページより。
このソフトの特徴は、次のようなものです。
- 簡単に作図できる
・・・図面をスキャナーで読み込んで(jpegファイル等を作成し、その画像ファイルを読み込む)、簡単に不整形地が作れる - 細かな応用ができない
・・・図面を座標や測量図データから直接復元できないため
※私のやり方が悪いのかもしれませんが・・・。 - 使わなくても基本料金がかかる
・・・エッサムの「ゆりかご倶楽部」の会員になる必要があるので、ソフトを使わなくても基本料金がかかり続ける。また、最低契約期間が1年間となっている。
まず、スキャナーで、測量図や公図を読み込んでjpegファイルや、pngファイルを作ります。
これを画像としてソフトで読みこんで、その画像を「なぞるように」線を引けば、簡単に作図できます。
これは、パソコンソフトになれていない方々にとって、メリットになります。
しかし、毎月の料金(約3,000円~4,000円前後?)がかかるのと、細かな設定ができないことがネックです。
土地評価を極めよう?とすると、どうしても、
- 小数点が2ケタでは足りない
- 測量図をデータで直接復元できない
という壁にぶち当たります(>_<)
後でご説明するCADソフトは、小数点を10ケタ以上、入力することができますので、それだけ土地図面を正確に作ることができます。
また、測量図を「直接」復元できないことも問題です。
「直接」とは、測量図に書いてある次のようなデータのことです。
※座標測量図
こちらは、境界標(土地の境目の目印に埋まっている杭)の座標(XY)を測量し、その座標をつなぎ合わせたものになります。
※左上の赤上に、XYの座標値が記載されています。
最新の技術(GPS等)を使った電子機器で測定し、データも座標(XY)で記録しているので、最も正確と言われています。
ちなみに、座標値を使って入力する場合は、つぎの記事が参考になります。
※三斜測量図
上記の座標で土地地積を求めるのが、一番正確な方法です。
ですが、以前は、現在のような測定機器がありませんから、「三斜(さんしゃ)」で測量をしていました。
※三斜とは、とにかく三角形をたくさん作って、それぞれの辺の長さを求め、それを基に土地の面積を計算する方法です。
この三斜測量図は、先程の座標測量図ほどではありませんが、一定の制度が担保されていますので、こちらの辺の長さを使って、図形を復元することになります。
これらの測量図の数値(座標、三角形の三辺の長さ)を「直接」入力できるのは、CADソフトだけなんです。
※「蔭地名人」では、単に画像データを「なぞって」線を引いているだけなので、どうしても若干の誤差が生じます。
正しいデータでないと、どのような問題が起きるのでしょうか?
まず考えられるのは、不整形地の評価です。
不整形地の評価減額は、「かげ地割合」が5%きざみなので、境目ギリギリでなければ、問題ないかもしれません。ですが、ギリギリ(例えば14.9%なのか、15.1%なのか?となった場合)は、評価額が変わってしまう可能性があります。
このようなギリギリの場合、安全策をとるのであれば、評価額が高い方(=納税者不利な方)で計算することになってしまうかもしれません。
ですが、(後でご説明する)CADソフトであれば、(測量図がある場合)基のデータで直接計算している訳ですから、税務署の方が異議を唱えるのは、難しくなるでしょう。
なお、似たようなソフトで、株式会社東京アプレイザルが出している「AP-CAD」がありますが、こちらも「蔭地名人」と似たような操作感となります。
ですので、より正確に計算したいのであれば、どうしてもCADソフトを使うことになります。
JW_CAD
CADソフトには、無料のもの(フリーソフト)と有料のものがあります。
フリーソフトで有名なので「JW_CAD」になります。
こちらは、無料なので気軽に使えるというのがメリットです。
また、無料とはいえ、CADソフトなので、さきほどの測量図のデータを「直接」入力することができます。
※XYの座標を、そのまま入力し、座標測量図を正確に復元することができます。
ですが、
- マウスで直感的な入力がしにくい
- メニューが見にくい
(慣れれば問題ない?)
というのが、私には合わなかったので、現在は使っていません。
最近、税理士先生向けに、このソフトを使ったセミナーが開かれているようです。
フリーとは言え、きちんとしたCADソフトですから、使いこなすことができれば、より正確な土地評価ができると思います。
TurboCAD(TurboSketch)
「TurboCAD(TurboSketch)」(ターボキャド:ターボスケッチ)というソフトがあります。
このCADソフトですが、海外メーカーが製作したものを、キャノンが日本で販売しています。
このソフトには、
- Professional
- Standard
- Sketch
と3種類あります。
「Professional(プロフェッショナル)」が最上位ですが、我々税理士には不要な機能(3Dで図面を作成できる機能」が付いていますので、一番安い「Sketch」で充分かと思います。
※私も「Sketch」を使っています。
※2018年5月現在、海外では最新版の「TurboCad 2018」が発売されたようです(日本ではまだ発売されていません。)
CADソフトというのは、とにかく「高い」んです。
一番有名なソフトとして「AutoCAD」が挙げられますが、これは年間数万円から数十万円もかかりますので、ちょっと手が出ません。
ですが、この「TurboCAD(TurboSketch)」であれば、1万円前後で購入できて使い切りなので(=維持費用を払わなくて良いので)、コスパ的にもいいのかな、と思っています。
※高くてメジャーなソフトの方が、操作マニュアル等が整備されていて、ユーザーも多く、使いやすいと思うんですが、いかんせん高すぎます・・・。
この「TurboCAD(TurboSketch)」で、三斜測量図を復元するときは、次のように「円」を書くことになります。
こちらのように、まず直線を引き、その直線の始点、終点から円を描きます。
その円を描く際に、三斜測量図の数値(各三角形の辺の長さ)を入力し、三角形を多数復元して、その土地本来の形を復元していきます。
※座標測量図は、座標の数値を直接入力することになります。ですが、そのまま入力することができませんので、エクセル等で数値を計算する必要があります。
私が「TurboCAD(TurboSketch)」を使い始めたのは、ある人(私が尊敬している土地評価名人の先生)が、このソフトを使っていたからです。
難しい土地評価について、その先生にお仕事をお願いした際、
「私はターボスケッチというソフトを使ってます。例えば、三斜測量図は、こんな形で円を描くんですよ」
と、1分くらい説明して頂き、そのソフトの存在を知りました。そして、私なりに工夫して土地の評価図面を作成してきました。
※CADソフトを習得するまでに、相当な時間を費やしていますが・・・(T-T)
なお、このCADソフトを使った実際の操作方法は、下記を参考にしてみてください。
土地評価ソフトのまとめ
相続税を計算する際、土地評価ソフトを導入すべきなのか?
これには、
- 費用面
- PCに詳しいか?
- CADを習得する時間が作れるか?
といった点を考える必要があります。
もちろん、CADソフトを入れた方が、一番正確な計算ができます。
ですが、習得するまでには、結構、時間がかかります。
※CADソフトの操作方法以外にも、測量図の見方(座標値等の見方)も学ぶ必要があるため。
これに対して、ベンダーが税理士向けに作成しているソフト(蔭地名人といったソフト)は、かなり使いやすいと感じます。
※某大手税理士法人では、パートのおばさんが税理士向けベンダーソフトを使って土地評価をしていると、聞いたことがあります。
「魂は細部に宿る」という、ことわざがあります。
お客様のために、どこまで極めてお仕事をするのか?
時間のある税理士先生は、ぜひ、CADソフトに挑戦してみてください!