相続税申告書の作成は大変ですが、その理由の一つとして、資料収集と資料整理が挙げられます。
これらを効率化することが、税理士業務の効率化につながり、ひいては業務の正確性(正確な相続税計算)につながります。
今回は相続税申告書の作成にあたって、使うと便利なツール・ソフトについて考えてみました。
※3歳6ヵ月の長女。秋葉原の某パーツ店前で撮影。
iPad Pro(12.9インチ)
IPad にはいろいろな使い方がありますが、 私は知人税理士と、お互いの事案について検討・議論するために使っています。
※筆者が使っているiPad Pro(12.9インチ・2020年モデル)
iPad には、メモ機能が標準で装備されています。
このメモ機能は、iCloudに自動的にバックアップされるため、単体で利用しても使い勝手が良いものです。
※私は、継続的なお客様とのやり取りを、Apple Pencilで手書きでメモして記録しています(手書きの方が頭のなかで整理でき、記憶できるため)。
このメモ機能ですが、他の iPad を持っているユーザーと、メモを共有することができます。
具体的には、 どちらかが先にメモを作り、 もう一人がそのメモを共有するという流れになります。
※両者ともにiCloud のアカウントが必要です。
このメモのいいところは、手書きの内容がリアルタイムで反映されるということです。
例えば次のようなメモを作成したとします。
私の知人税理士がメモ(手書き)を作成し、ラインなどで「後で見てください」などとメッセージする
↓
私がメモを見て、赤字で書き込む
↓
知人税理士が電話をかけてきて議論
↓
両者でメモを見ながら、追加で書き込みしていく。その結果が、メモにリアルタイムで反映される。
※「ここの評価単位は〇〇があるから、こうなるのではないか?」などといったように、話しながら書き込みできるのです。
対面で実際に会うと、その場で両者がメモ書きし、議論が進むことでしょう。
しかしながら、コロナ禍のなか、なかなか会うこともできません
その場合、iPadのメモ機能を使って、リアルタイムで追加書き込みしながら電話で話しあう、というのは極めて有効だと思います。
今回は土地評価について検討してみましたが、組織再編税制におけるグループ図、借地権問題における底地と借地権との按分計算など、難しい問題の場合、複数の人間が図に書き込んでいくと、良い議論ができるのではないでしょうか。
税理士業務にiPad なんか必要ないと思っていましたが、 とても有効ですので、おすすめです。
なお、このような使い方をする場合、画面は大きい方が良いでしょう。なので、私は大型(12.9インチ)のiPad Proをつかっています。
iPhone(又は写真が高性能なスマホ)
相続税申告では様々な資料を集めることになりますが、一番大変なのはやはり名義預金の確認でしょうか。
名義預金をチェックするためには、過去数年分の通帳コピーを集める必要があります。
以前は「預かり証」をお客様に渡して通帳を預かったりしていましたが、近年はスマホ性能が上がり、鮮明に写真が写るようになりましたので、現場(お客様の自宅など)で、スマホ連写で通帳写真を撮れば、それで十分対応できるようになりました。
短時間で何十枚も写真を撮ることになりますから、ピンボケなどの失敗は許されません。そのため、スマホは最新のものを使うと良いでしょう。
また、セキュリティを考えるのであれば、AndroidではなくiPhoneの方が良いのかもしれません。
※この辺りについては考え方は分かれるでしょう。
ただ、機器の制約がある場合、 この方法では対応できない場合があります。
大手税理士法人の場合、会社のデジカメでないとだめ(個人の私物を使うことは許さない)といったこともあるでしょう。
数年前のデジカメですと、性能が落ち、確認用画面も小さいですから、なかなか難儀するかもしれません。
※関係ありませんが、以前、相続税の税務調査で、税務署員がえらい古いデジカメを持参して写真をとっていたことが思い出されます。公務員の場合は備品購入予算もつかないので、大変なのでしょうね。
ちなみに私はiPhone13Proを利用しています。
※充電台としてAnker623を使っています。
3年ぶりにiPhoneを買い換えたのですが(以前はiPhoneXS)、以前の機種に比べて、ピンぼけや手ぶれなども減り、作業効率が上がりました。
紙の通帳には折り目がついていますから、左手で通帳を伸ばしつつパラパラめくり、右手で連写するという作業が必要になります。場合によっては、お客様に通帳を押さえておいてもらうことも必要になるでしょう。
ドキュワークス(DocuWorks)
世の中、電子申告が推奨されていますが、 相続税申告書は紙で提出する方が、まだまだ多いと思います。
この理由として、添付資料が多い(数十枚以上)ということが挙げられます 。
e-taxで添付書類をPDF送信すればいいんじゃないの?というご意見を聞きますが、データ容量の制限がありますので、大量の書類を送ることができません。
そのため、相続税申告書については、今後暫くは、紙で提出することになるでしょう。
※正確に計算し、その検討結果を税務署に伝えようとすると(=真摯に仕事に取り組めば取り組むほど)どうしても提出書類が多くなります。
ところで、相続税申告書は、原則として、相続人それぞれに控えを渡します。
また、税務署用、税理士控用も合わせると、4部以上印刷することも珍しくありません。
そのため、いったん作成した原稿を、いかに効率よく印刷するかが問題となります。
税務署に提出する書類すべてをPDF化し、並べ替えてまとめて印刷するということも考えられますが、なにせPDFはファイルは重たいので、パソコンを最新・最高スペックにあげたとしても、若干もたつきがあります。
この点、ドキュワークスであれば、ファイルが軽く、簡単に束ねることができますので、一旦原稿を束ねさえすれば、印刷するのは簡単です。
また、路線価図の切り貼り(特に、対象地が路線価図2ページにまたがる場合など)にも、 ドキュワークスが有効です。
※私は、対象地を黄色で囲んで(マーカー機能を使って)、カラー印刷して提出するようにしています。
会社決算、 領収書整理などについては、多くの税理士先生が効率化・ツールの使い方を解説していますが、相続税についてはあまり書いてないので、今回考えてみました。
勤務税理士の場合、決められたパソコン、決められたツールで仕事しなければなりません。
しかし、我々開業税理士の場合は、自分の裁量で自由なツールを使うことができます。
様々なITツールを使って、効率化を図り、真摯に業務に取り組みたいと思います。