税理士に限らず、士業(弁護士、司法書士、弁理士、税理士、社会保険労務士、行政書士)の主な仕事として「書類の作成」があります。
書類にも色々な書類がありますが、特にミスできないのが「役所に提出する書類」になります。
- 司法書士・・・法務局へ提出
- 弁理士・・・特許庁に提出
- 税理士・・・税務署に提出
- 社会保険労務士・・・年金事務所、労働基準監督署に提出
- 行政書士・・・入管、県庁等に提出
ミスにも「取り返しがつくミス」と「取り返しがつかないミス」があると思います。
※このさじ加減を覚えると、仕事の疲れが減ると言われているんですが、私は常に全力投球(どんな書類をミスしないようにトリプルチェック)しているので、疲れが抜けません・・・。
書類仕事でミスしないためには、どうすれば良いのでしょうか?
少し考えてみました。
※守秘義務の関係で、事実を少し変更しています。
※お宮参りの衣装を選択中(某ホテルにて)
書類仕事のミスをなくす方法とは?
書類仕事のミスを完全になくすのは不可能ですが、減らすことはできます。
日頃から、私なりに心掛けていることをまとめてみました。
紙に印刷してチェックする
このクラウド・IT時代。
色々な弁護士先生、税理士先生が、クラウドに書類を保存し、PC(デスクトップ、ノート)の画面上で書類をチェックしています。
ですが、このチェック方法ですと、次のような間違いが起きるかもしれません。
漢字間違い
以前、ある司法書士先生と居酒屋で仕事の話しになりました。
その司法書士先生いわく、
「私は、登記書類は、必ず、紙に印刷してチェックしています。具体的には、原始資料と申請書とを比較して、字句に間違いがないか、鉛筆で一字一字、字句にチェックマークをつけて確認するようにしています」
ということでした。
司法書士先生のお仕事は、ある意味、間違えられないものです。
例えば、相続登記の場合、不動産の甲区(所有者を示す欄)に、
「相続人 鈴木一郎」
とあるところを、
「相続人 鈴木二郎」
と間違えて登記申請した場合、半永久的に「鈴木二郎」という文字が謄本に残ってしまいます。
※錯誤(間違いであったこと)登記をして訂正しても、鈴木二郎の文字は、半永久的に残ってしまいます。まあ、明らかな間違いであれば、法務局から「間違っている」と電話が来るそうですが・・・。
これをやってしまいますと、お客様によっては、
「うちの土地(の謄本)を傷つけやがって!賠償しろ!」
と、言うとか言わないとか・・・
※もちろんミスはミスなんですが、別に、その土地自体の価値が減った訳ではないので、私なんかは仕方がないと思いますが・・・。司法書士先生のお仕事は、リスクの割に報酬が不当に低いと思うんですよね・・・。
ですから、漢字間違い(字句の間違い)をしないためには、紙に印刷して、鉛筆片手にチェックすると良いでしょう。
文章の総体(まとまり)のチェック
ある大学の先生のお言葉です。
「ボクは、論文をチェックするときは、必ず紙に印刷してチェックするよ。そうでないと、文章の総体(まとまり)が分からないからね」
私は、開業するまでは、今ほど真剣に仕事をしていませんでした。
※勤務時代中は、それなりに必死だったのですが、今から振り返るとダメダメでした(^^ )
ですが、開業して7年半が経過した今。
この大学の先生がおっしゃった意味が少しだけ、分かります。
文章の総体(まとまり)について、私なりに考えると次のようになります。
- ですます調のチェック
- 一文ごとの長さ(極端に長い文章はないか)
- 句読点の感覚(紙に印刷して俯瞰で眺めると分かりやすい)
- 論旨が首尾一貫しているか
これらは、狭いPC画面では、上手くチェックできません。
その意味で、紙に印刷する意味があるでしょう。
なお、私が心掛けているのは、
「修正のつど、もう一度、全ての用紙を印刷する」
というものです。
税理士の場合ですが、税金の申告書(法人税の別表、相続税申告書)は、一部の数字を変更すると、全体に影響が及びます。
また、長い文章(税務署に対する意見書、事情説明書等)も、事実誤認、表現間違い等で一部を変更した場合、話しが首尾一貫しない可能性もあります。
そのため、一部を変更したら、その訂正箇所だけでなく、全体を印刷する方が良いと思います。
※紙がもったいないという意見もありますが、それよりもミスが怖いです。紙の価格なんて、たかだか1枚0.5円から1円くらいですから。
※鉄板焼きでエビを焼いてもらいました。
できれば1週間前に完成させて2回チェックする
新入社員が上司から書類仕事を任されて、ミスを連発。
その際に、口を酸っぱくして言われるのが、
「書類をチェックするときは、早めに完成させて、時間を空けてからチェックしなさい」
ということだと思います。
※これは、どんな書類仕事でも必要な、基本的な事項だと思います。
税理士の書類仕事の特徴として、
- 人名と数字とが混在している
- 転記項目(戸籍謄本、住民票、決算書、会計帳簿、領収書)が多い
- 間違えたら訂正できない項目が多い(小規模宅地の選択項目等)
というものが挙げられ、ミスできない事項が多いんです(>_<)
ところで、書類をチェックする際の問題点として、
「自分で再チェックすると、思い込みがあるからチェックにならないのではないか?」
ということが挙げられます。
そのため、他人がチェックすることがお薦め、と言いたいところですが、これは一般的な業務の場合です。
難しい事案になると、他人にチェックをお願いしても、その他人が仕事内容を理解出来ないので、チェックにならない可能性があります。
そのため、私は「早めに書類を完成させて、自分で再チェックする」という方法をとっています。
そして、「1回目のチェックは書類の最後(お尻)から、2回目のチェックは真ん中から」といったように変化をつけて、確認するようにしています。
※ある日のランチの風景。牛すじ肉のトマトパスタ。
提出用のコピーをとっておく
役所に書類を提出する際は、
- 提出用・・・役所が受け取って処理する分
- 控用・・・提出用と同じものを作成し、提出した証明として収受印をもらう分
として、最低2部、書類を作成することになります。
私は、絶対にミスできない書類(数千万円から数億円以上の納税額である相続税申告等)については、
- 役所が収受印を押す箇所
- 納税者の署名押印が必要な箇所、提出用のコピーをとるようにしています。
上記の部分は、「提出用」のコピーをとるようにしています
提出用と同じ内容の控用に収受印をもらうのに、なぜ、わざわざ提出用のコピーもとるのか?
それは、万が一、役所から
「提出された書類には、記載もれ(署名、押印、印字漏れ等)があるから、この書類は無効になりますよ」と言われることを避けるためです。
提出用・控用は、通常は同じパソコン・プリンターで印刷しますから、内容は同じのはずです。
※パソコン側でエラーや印刷ミス、紙詰まりが起きない限り、同じ内容になります。
ですが、万が一、署名や押印もれの箇所があるかもしれません。
また、プリンターの紙詰まりで、白紙の部分もあるかもしれません。
そのような、役所との行き違いを避け、自分自身が確かに役所に提出した、ということを後日確認するために、私は、(控用とは別に、わざわざ)役所へ提出する直前に、提出用の書類もコピーをとっておいたりします。
※全ての案件ではなく、金額が大きい案件のみですが(^^ )
これは、民間企業の書類作成でも共通することです。
大切な取引先との契約書を、当社で作成。
そして、その契約書(先方用と当社用との2部)を、当社の印鑑を押して先方へ送付。
しかし、先方用は訂正前のもの、当社用は訂正後のもの、として、内容が異なる契約書を送付してしまった。
※弁護士に契約書をチェックしてもらっている会社であれば、ありうる話しです。特に、細かな文言の訂正をした後は、ページ数、行数も同じですから、どちらが正しい書類か、分からなくなることもあるでしょう。
そのようなミスをなくすために、先方へ送付する書類は、送付直前にコピーをとって送る。
そうすると、後日、先方から問い合わせがあったときに、真摯に、かつ即時に対応できるでしょう。
※某大型郵便局の窓口にて。
郵送前に写真をとってみる
私は心配性なので、勤務時代も、開業した現在でも、同じ失敗を繰り返しています。
それは、一度、封をした書類を、
「きちんと書類を入れたかな?」
として、再度開封してしまうことなんです(^^;)
※これ、書類仕事をしている人であれば、誰しも経験があると思います。
特に、期限ギリギリの仕事をしているときで、
「この書類を、絶対に明日、税務署(または他の役所でもいいですが)に、到着させなければならない!」
というときは、当たり前ですが、絶対に失敗できません(-_-)
そのため、何度も確認することになりますが、一度、封をしてしまった後に、封を開けますと、封筒が無駄になってしまいます。
※レターパックの場合、交換手数料を払えば交換できるのですが、番号シールを剥がした後ですと、交換出来なくなってしまいます・・・。これで何度も510円(=赤のレターパック代)をソンしたことか・・・(‘-‘*)
なので、最近私は
「封入前に、書類の全体写真を撮る」
ということを実践しています。
こうやって、大きな会議テーブルの上に、封入直前に書類を並べ、それを写真にとるようにしています。
この方法のメリットとして、
- 「あの書類、確かに入れたかな?」として、封筒を開封することがなくなった
- 役所に提出した書類について「提出漏れがある」と連絡がきても、きちんと提出したとして、反論できるかもしれない(法律的に有効かどうかは分かりませんが・・・)
ということが挙げられます。
最近は、スマホで写真をとることができますから、便利になりました。
色々な証拠・記録を残すのに、写真は有効です。
※きちんと情報保護の手立てを考える必要はありますが。
色々と工夫してみましょう。
※お宮参り後の「お食い初め膳」。小さいですが鯛がついていました。
我々(個人で開業している人達)はミスできない
数年前の話しなんですが、ある役所(税務署・区役所ではありません)の窓口で書類を提出しました。
どんな仕事でもそうですが、役所に書類を出すときは、「提出用」と「控用」の2部作成し、控用に「収受印(確かに提出したとして、提出日の日付が入っている印鑑)」を押してもらいます。
普通、窓口で書類を提出する場合、収受印を押してもらったことは確認しますが、収受印の日付までは、(いくら慎重な私であっても)その場では確認しません。
書類を提出し、タクシーで事務所に戻って、念のため、収受印が押されているか再度確認しました。
そうしたところ、
「収受印の日付が1週間ズレている(未来の日付になっている)」
ということが分かりました(-_-)
事務所に戻って役所に電話しました。
たまたま、窓口で収受印を押してくれた、30歳くらいの男性につながりました。
そして、
「収受印の日付が4月5日ではなく、4月12日になっていますが、どうすれば良いでしょう?」
と質問しました。
※日付は架空です(^^ )
そうしたところ、担当者様は、
「え?何ですか?今日は4月12日ですよね?」
とおっしゃるので、改めて、今日が4月5日であることを伝えたら、担当者様はカレンダーを確認したらしく、
「あ~。大変申し訳ございません・・・」
と、おっしゃりました。
仕方がないので、タクシーで再度役所に行き、未来日付の収受印の横に、本日付けの収受印を押してもらいました。
※収受印が二つ押され、書類が汚くなってしまいましたが・・・。
私も色々と経験しました。
ここで、役所の担当者様を怒ってはいけません。
逆に、感謝するのです(^^)
2回目に押してもらった日付印には、役所の処理番号(処理を進めるための管理番号)を書いてもらうようにしました。
そこで私は、
「逆に、間違えてラッキーでした。(既に処理が進んでいたので)処理番号を入れてもらったので、本当に処理されている証明になります!」
と、怒るのではなく、逆に感謝の言葉をお伝えしました。
そうしたところ、担当者様は、
「そう言って頂けると、こちらも救われます~(>_<)。」
と、悲しそうな、嬉しそうな?顔で返されました。
その後で、「日付の押し間違えって、結構あるんですか?」とお聞きしたら、「実は、たまにあるんですよ~。いまも、間違えて押した書類を回収中なんです~」とおっしゃっていました。
※この人、大丈夫かいな~、とも思いましたが(^^ )。私の「聞き出し能力?」が上がっていることを実感?できました。
※某高層ビルからの風景。
ここで、
「役所は気楽だよな~。間違えてもおとがめナシなんだからな~」
と考えてはいけません。
こちらとは「立場」が違うんです。
※私がもし、役所に勤めていたら、相当、緊張感のない仕事ぶりだったと思います(^^ )
こちらは「ミスできない」立場。
あちらは「ミスしても訂正できる」立場。
それを意識して仕事をするべきなんです。
個人で開業している我々は「ミスできない」立場の人間です。
ミスには色々な種類のものがあります。
- 書類作成のミス
- 気づかなかったミス
- 忘れてしまうミス
- そもそも法律を知らないミス
そのなかで、「書類作成のミス」は、自分の工夫次第で防げるミスになります。
もちろん、我々は「人間だもの(あいだみつを)」なので、100%のミスは防げませんが、できるだけの工夫はするべきです。
書類バカ(書類だけ作れてコミュニケーションが取れない人)になってはいけません。
コミュニケーション能力は大切です。
※私も、書類バカなので、コミュニケーション能力を高めるために、色々と努力しています。
ですが、やはり人間には「適性」があります。
どちらの仕事(「書類仕事」か「コミュニケーションを取る仕事」か)」が合っているか、意識して、自分の進路を決めるのも、良いかもしれません。
書類仕事のミスについて、改めて振り返ってみました。
上記のような工夫をしているから、これまで大きなミスなく仕事ができている。
そう思ってはいますが、ごく小さなミスは、やはりあります。
どうすればミスが無くせるのか、皆さんも日々工夫してみてくださいね。